第5回ソシオ・トーク・サロン概要〜伝統工芸 若き匠のワーク&ライフ
【ゲスト】上川 善嗣 氏(有限会社日伸貴金属 取締役)、上川 智子 氏(同社 商品企画部)
◆プロフィール等⇒http://www.nisshin-kikinzoku.com/
【テーマ】伝統工芸 若き匠のワーク&ライフ
【日 時】2010年5月13日(木)18時45分〜20時45分
【会 場】ちよだプラットフォームスクエア 地下1階R002会議室
【内 容】
1)伝統工芸 東京銀器という仕事
2)介護を支える家族と地域の絆
3)和の芸術品〜東京銀器を体感してみよう
我が国の銀器の歴史は古く、奈良時代から続くものだそうですが、今ではその大半が東京で生産されています。
こうしたことから、昭和54年には、国から「東京銀器」という名称で伝統産業として指定されました(東京都指定は昭和57年より)。
現在、東京銀器の生産者は88社だそうですが、ほとんどが高齢化と継承者不足の問題を抱えています。
そんな中で、東京銀器の次代を担う“若き伝統工芸の匠”が有限会社日伸貴金属の上川さん兄妹です。
まずはご長男の善嗣さんが、東京銀器という伝統工芸の歴史、技術、魅力などについて、丁寧にご説明くださいました。実際に銀器を目の前にしながらのご説明なので、お話に迫力があります。
「憧れ」としての魅力・「いぶし銀」としての魅力・「人により近い存在」としての魅力。これが銀器の魅力だとおっしゃいます。
食器、指輪、リースなど、それぞれが深く、個性豊かに輝いているのもそうしたお気持ちを込めて手作りされているからだとうかがえます。
「手間暇をかけて一つの物を大切にする」、「心のゆとりこそが伝統工芸」との言葉にも納得です。
伝統工芸、ものづくりの家に生まれた上川さん4兄妹は、親に強制されたわけでもなく、それぞれが自然に今の仕事を選択したとのことでした。
ただ、善嗣さんは、小学生の時に大病を患った経験から、一時、「医者になりたい」という夢を持っていたそうです。
そのとき、お父様は、「では、一生懸命勉強して、トップクラスの中学に合格したら医者の道を進めばよい」と高いハードルながらもチャンスを与えられたそうです。そこで善嗣さんは発奮し、「生涯で最も勉強した」のだそうですが、残念ながら受験には失敗。
その後もスポーツ選手や幾つかの夢を抱く善嗣少年に、お父様はいつも挑戦のチャンスを与えられたそうです。
そうした経験を積んで、結果として自ら銀器職人になることを決意し、いまではこの伝統産業を支える次代のリーダーの一人として、本業だけでなく、社会貢献活動や業界の広報活動など、各方面でご活躍されています。
現在、日伸貴金属では、子どもから大人まで、銀器づくりの体験学習ができるコースを提供しています。これは、ものづくり、東京銀器を体験していただくための社会貢献活動の一環として行っているものです。
東京都内だけでなく、全国各地から修学旅行のグループ活動として同社を訪問する学校も多数あり、仕事の合間にこうした体験学習者に丁寧に対応するのも「私たちの社会的価値創造活動なのです」と、まさに「ソシオバランス」的なコメントをおっしゃってくださいました。
そして、上川さんたちを支えているのが、ご家族の絆。
ご両親、兄妹、奥様、子どもたちと賑やかな家族に囲まれて、家族との時間も大切にしながら仕事に取り組むご様子もいきいきと語ってくださいました。
一方、現在、お母様が介護を必要とされておられることから、長女の智子さんは「江戸女職人」として日々、銀器づくりに勤しみながらも、お母様の介護という大切な役割も担っていらっしゃいます。
当初、家族だけで介護に取り組んでいた頃は、心身ともに疲れてしまい、仕事もプライベートもなにか行き詰まり感を覚えたりもしたそうです。しかし、介護保険を利用するようになり、また、介護家族懇談会をはじめとした各種の地域住民の活動に参画するようになってから、行政サービスや地域との連携などの相互支援のお陰で、時間的にも精神的にもゆとりが持てるようになり、仕事と介護の両立が気持ち良く果たせるようになったということです。
そうしたことも、冷静にさらりと粋にお話になる智子さんでしたが、その境地に至るまでのご苦労は計り知れないものがあったことと拝察いたします。
そして、いまでは、家族や地域との絆を深めつつ、「ちょこっとボランティア」で社会貢献もし、本業の「銀職人」としても女性ならではの感性を武器に、可愛くて繊細な作品づくりに取り組んでいらっしゃいます。
さて、ご兄妹によるプレゼンテーションが一段落したあと、お待ちかねの「銀器に触れる」体験タイムです。
今回は、わざわざお二方がお茶やビールまでご持参くださり、「銀器」と「ビニールコップ」とで飲み比べをしてみることに。
飲み干すと顔が映るピカピカの銀器に注いだお茶とビール、そして一方ではビニールコップ。
参加者の皆さん、興味津々で味わっています。
「あ、銀器の方がまろやか!」「しっとりしたシルクのような味わいじゃない?」などという感嘆があちこちから聞こえてきます。
皆さん、かなり興奮気味(笑)。
さらに、銀の指輪を各テーブルに回す段階になると、興奮もピーク。
銀製品の美しさ、体温の伝わり具合、輝きなどなど、皆さんそれぞれ五感で感じようとされています。
「私たちは、伝統工芸、東京銀器のものづくりという仕事に誇りをもって取り組んでいます。」というお二方のお言葉は、本当に仕事に対する自信、銀器への誇りと家族への愛情が満ちたもので、仕事も家族も地域も趣味も、いろいろなものが本当に心地よく調和した状態でいらっしゃるのだなと感じられるものでした。
「母に銀の名札つきネックレスを作ってあげたら、デイサービスに行ったときに『素敵なのをつけているわね!って、うらやましがられたのよ』と嬉しそうに話してくれたんです。」
上川さんが本当に幸せそうな笑顔で語ってくださいました。
第一部終了後、場所を変えての懇親会には12人の方々がご参加され、さらに銀器でビールを飲むなど遅くまで楽しいひとときを過ごすことができました。
上川善嗣さん、智子さん、2時間という短い時間の中で、貴重なお話と銀器体験を楽しませてくださいまして、本当にどうもありがとうございました。
ご参加者の皆様もどうもありがとうございました!
【参加者の感想レポート】
◆プロフィール等⇒http://www.nisshin-kikinzoku.com/
【テーマ】伝統工芸 若き匠のワーク&ライフ
【日 時】2010年5月13日(木)18時45分〜20時45分
【会 場】ちよだプラットフォームスクエア 地下1階R002会議室
【内 容】
1)伝統工芸 東京銀器という仕事
2)介護を支える家族と地域の絆
3)和の芸術品〜東京銀器を体感してみよう
我が国の銀器の歴史は古く、奈良時代から続くものだそうですが、今ではその大半が東京で生産されています。
こうしたことから、昭和54年には、国から「東京銀器」という名称で伝統産業として指定されました(東京都指定は昭和57年より)。
現在、東京銀器の生産者は88社だそうですが、ほとんどが高齢化と継承者不足の問題を抱えています。
そんな中で、東京銀器の次代を担う“若き伝統工芸の匠”が有限会社日伸貴金属の上川さん兄妹です。
まずはご長男の善嗣さんが、東京銀器という伝統工芸の歴史、技術、魅力などについて、丁寧にご説明くださいました。実際に銀器を目の前にしながらのご説明なので、お話に迫力があります。
「憧れ」としての魅力・「いぶし銀」としての魅力・「人により近い存在」としての魅力。これが銀器の魅力だとおっしゃいます。
食器、指輪、リースなど、それぞれが深く、個性豊かに輝いているのもそうしたお気持ちを込めて手作りされているからだとうかがえます。
「手間暇をかけて一つの物を大切にする」、「心のゆとりこそが伝統工芸」との言葉にも納得です。
伝統工芸、ものづくりの家に生まれた上川さん4兄妹は、親に強制されたわけでもなく、それぞれが自然に今の仕事を選択したとのことでした。
ただ、善嗣さんは、小学生の時に大病を患った経験から、一時、「医者になりたい」という夢を持っていたそうです。
そのとき、お父様は、「では、一生懸命勉強して、トップクラスの中学に合格したら医者の道を進めばよい」と高いハードルながらもチャンスを与えられたそうです。そこで善嗣さんは発奮し、「生涯で最も勉強した」のだそうですが、残念ながら受験には失敗。
その後もスポーツ選手や幾つかの夢を抱く善嗣少年に、お父様はいつも挑戦のチャンスを与えられたそうです。
そうした経験を積んで、結果として自ら銀器職人になることを決意し、いまではこの伝統産業を支える次代のリーダーの一人として、本業だけでなく、社会貢献活動や業界の広報活動など、各方面でご活躍されています。
現在、日伸貴金属では、子どもから大人まで、銀器づくりの体験学習ができるコースを提供しています。これは、ものづくり、東京銀器を体験していただくための社会貢献活動の一環として行っているものです。
東京都内だけでなく、全国各地から修学旅行のグループ活動として同社を訪問する学校も多数あり、仕事の合間にこうした体験学習者に丁寧に対応するのも「私たちの社会的価値創造活動なのです」と、まさに「ソシオバランス」的なコメントをおっしゃってくださいました。
そして、上川さんたちを支えているのが、ご家族の絆。
ご両親、兄妹、奥様、子どもたちと賑やかな家族に囲まれて、家族との時間も大切にしながら仕事に取り組むご様子もいきいきと語ってくださいました。
一方、現在、お母様が介護を必要とされておられることから、長女の智子さんは「江戸女職人」として日々、銀器づくりに勤しみながらも、お母様の介護という大切な役割も担っていらっしゃいます。
当初、家族だけで介護に取り組んでいた頃は、心身ともに疲れてしまい、仕事もプライベートもなにか行き詰まり感を覚えたりもしたそうです。しかし、介護保険を利用するようになり、また、介護家族懇談会をはじめとした各種の地域住民の活動に参画するようになってから、行政サービスや地域との連携などの相互支援のお陰で、時間的にも精神的にもゆとりが持てるようになり、仕事と介護の両立が気持ち良く果たせるようになったということです。
そうしたことも、冷静にさらりと粋にお話になる智子さんでしたが、その境地に至るまでのご苦労は計り知れないものがあったことと拝察いたします。
そして、いまでは、家族や地域との絆を深めつつ、「ちょこっとボランティア」で社会貢献もし、本業の「銀職人」としても女性ならではの感性を武器に、可愛くて繊細な作品づくりに取り組んでいらっしゃいます。
さて、ご兄妹によるプレゼンテーションが一段落したあと、お待ちかねの「銀器に触れる」体験タイムです。
今回は、わざわざお二方がお茶やビールまでご持参くださり、「銀器」と「ビニールコップ」とで飲み比べをしてみることに。
飲み干すと顔が映るピカピカの銀器に注いだお茶とビール、そして一方ではビニールコップ。
参加者の皆さん、興味津々で味わっています。
「あ、銀器の方がまろやか!」「しっとりしたシルクのような味わいじゃない?」などという感嘆があちこちから聞こえてきます。
皆さん、かなり興奮気味(笑)。
さらに、銀の指輪を各テーブルに回す段階になると、興奮もピーク。
銀製品の美しさ、体温の伝わり具合、輝きなどなど、皆さんそれぞれ五感で感じようとされています。
「私たちは、伝統工芸、東京銀器のものづくりという仕事に誇りをもって取り組んでいます。」というお二方のお言葉は、本当に仕事に対する自信、銀器への誇りと家族への愛情が満ちたもので、仕事も家族も地域も趣味も、いろいろなものが本当に心地よく調和した状態でいらっしゃるのだなと感じられるものでした。
「母に銀の名札つきネックレスを作ってあげたら、デイサービスに行ったときに『素敵なのをつけているわね!って、うらやましがられたのよ』と嬉しそうに話してくれたんです。」
上川さんが本当に幸せそうな笑顔で語ってくださいました。
第一部終了後、場所を変えての懇親会には12人の方々がご参加され、さらに銀器でビールを飲むなど遅くまで楽しいひとときを過ごすことができました。
上川善嗣さん、智子さん、2時間という短い時間の中で、貴重なお話と銀器体験を楽しませてくださいまして、本当にどうもありがとうございました。
ご参加者の皆様もどうもありがとうございました!
【参加者の感想レポート】
■市橋綾子さん(生活者ネット/杉並区議) ※市橋さんのご感想はブログに掲載されていますので、こちらをご参照ください。 「若き匠に聞く、銀器の魅力と工芸一家」 |
■神谷朱美さん(ワーキングホリデーで間もなく渡欧) 私は日本の『伝統工芸』が好きです。特に漆芸の大ファンで、いつか日本の漆産業を盛り上げていくような仕事をしたいと考えながら日々過ごしています。 今回のソシオトークサロンのテーマは『若き匠のワークライフバランス』。 伝統工芸『東京銀器』を生業にしている若手の職人さん上川宗伯さん・宗智さんご兄妹からお話を聴くことができました。 恥ずかしながら『東京銀器』というジャンルの伝統工芸を私は今回初めて知りました。個人的にはあまり耳覚えのない名前だったのですが、歴史は古く聖徳太子の時代(飛鳥時代)に大陸から仏教と一緒に伝来したそうです。 現在日本の伝統工芸はどこも高齢化が加速しており、東京銀器の職人さんも7割は65歳以上。上川さんは銀器の魅力を多くの人に知ってもらうために、伝統技術の実演・体験、修学旅行生の体験学習の他、雑誌・ラジオ・テレビなどのメディアを通じて『東京銀器』をいう伝統工芸のPR活動を行っているそうです。 今回のトークサロンではお茶やビールを東京銀器で飲み、プラスチックの容器と銀器とではどのように味が変化するかを実際に試してみました。 プラスチックに比べ、お茶の苦みやビールの苦みが和らぎまろやかになる印象を受けました。また、熱伝導率(熱の伝わり易さを表す値)がガラスの420倍と非常に高く、冷たい飲み物を入れた瞬間に銀器は急速に冷えました。(銀器で日本酒をひと肌に温めながら飲んだらさぞかし美味しいことでしょう) その他、銀イオンの効果で水が美味しくなること、抗菌作用がありその昔ローマ帝国は銀の水筒に水を入れて遠征し、ずっと新鮮な水を補給することができたため戦いに勝利したという逸話を聞き、銀器というものの面白さを感じることができました。 日本は歴史上類を見ない超高齢化社会が進み、今後の働き手の減少が危惧されています。日本の美しい伝統工芸を未来につなげていくために何ができるだろう。私にも何かできるんだろうか。 上川さんのお母さんの介護の話を聞き、自分のことしか考えていなかったことを反省し、これからの自分の生き方に関してまた悩み始めた今日この頃です。未熟な旅は終わりません。 |
■疋田恵子さん(杉並区社会福祉協議会) ソシオ・トーク・サロン、初参加でした。 どんな雰囲気なのだろう・・と恐る恐る扉を開けてみると、きらびやかな銀食器が目に飛び込んできました。そう、今回は伝統工芸 東京銀器の「若き匠のワークライフバランス」だったのでした。 最初のトークはご長男の上川善嗣さんから。 こういった伝統を守っていくには公私の境なく、修行修行の毎日なのか、と勝手な妄想をしていましたが話を伺うにつれ、家族とのふれあいや地域との交流のなかで、地域に伝統工芸を開きながら成り立っていることがわかりました。 とくにお話で印象的だったのは銀器を人に見立ててお話をされたところ。私自身、銀器のことをあまり存じ上げませんでしたが、関わり方次第でよさが引き出されるのだそうです。逆にほっとかれると黒くなってしまう、と。まるで人が孤独な状況に陥っている様を想像してしまいました。 また銀器という伝統工芸を日常生活につなげるプログラムを開発していらっしゃるお話にはとても興味深く伺いました。仕事を仕事の空間の中だけで考えるのではなく、地域での暮らしに結び付けていく発想をもつには自身のワーク・ライフ・バランスのとれていることが必要なのではないか、と感じました。 後半、妹さんの智子さんがお話になりました。智子さんがお話されたのはこの伝統工芸一家を支えてこられたお母さまの介護のこと。私は福祉の職場におりますので、初めての要介護認定が3、そこまで家族だけで支えておられたという話を伺い、大変なご努力・ご苦労があったことだろうと思いました。 でもその介護生活の中から改めて人との絆の大切さや地域との絆の大切さを見出すところ、さらに銀細工の新たな作品の提案につなげていくところ、これはバランスのとれた暮らしから生まれてくる産物なのかな、とまたまた考えてしまいました。 ワーク・ライフ・バランスと言葉では知っていても実際に自分の暮らしと照らしてみてもなかなかピンとはこないものでしたが、ソシオ・トーク・サロンの中でロールモデルのお話を伺わせていただく中で、暮らし方の提案をいただいているような気がしました。 ありがとうございました。 追伸:サロンの中で体験をした銀器でのお茶&ビール飲み体験、あんなにも口当たりや味?が変わるものなのか、とビックリ。実のある体験でした!(かなり、欲しくなりました!) |




